タイ・リサーチ報告会「Deep South<深い南>で目にしたものーー2022年の「戦争」「困難」、そしてタイバンコクと深南部のアートシーンからグローバル化時代の抵抗的「転換」を見出す」

開催日時

2023年1月8日 19:00 - 21:00
チケット2,000円

プログラム概要

インディペンデントキュレーター居原田遥による、現代アジアのアートと政治を考察するためのタイ・リサーチ報告会です。このイベントでは、タイでも現在に至るまで「紛争」地域とされている「Deep South深南部」で開催された芸術祭「KENDURI SENI NUSANTARA 2022(https://www.facebook.com/kenduriseninusantara/)」、そして2022年秋にバンコクで開催された大規模な国際芸術祭「Bangkok Art Biennale 2022(https://www.bkkartbiennale.com/)」をはじめ、報告者の居原田が目にしてた2022年・最新のタイのアートシーンの様相と考察に加えて、グローバル化とパンデミック下を挟む近年の東南アジア大陸部のアートやアクティビズムの事例を通じ、「抵抗的転換」というキーワードとしたアートの可能性について考えてみたいと思います。
新しい生活様式にもほどほどに慣れてきた世界。隣に座る人とすら距離を意識せねばならない一時的な(いまも?)隔離の時代のなかで、あるいは前代未聞の感染症に対する恐怖の陰で「見えづらくなっていた」ものがあるような気がしています。
閉鎖的なパンデミック時代の到来前には「移動の時代」と謳われる、飽和的なグローバル化の最中にあったアジア。そして「隔離の時代」が訪れた近年においても、とりわけ軍事政権が猛威を振る国ではその非道な政治弾圧に抵抗する運動が見られてきました。その代表的な場所であるタイ。パンデミック真っ只中の2020年以降も大規模な民主化を求める運動や学生運動が展開し、たくさんの若者をはじめ、アーティストたちも、そうした運動や抵抗の意思表示、あるいはユーモラスな思考の提示としての創作・表現活動に取り組んでいます。一方で、現在でも頻繁に爆発事件や銃撃戦などのテロが起こることを理由に紛争地域として認識されているタイの深南部では今年、「KENDURI SENI NUSANTARA 2022」という芸術祭が開かれていました。
「テロ頻繁地域または紛争地域」と認識されるディープサウス。一方で、いわばアジアの「グローバル・アート」の中心部となりつつあるタイ・バンコク。この二つの状況をてがかりに、近年のアジアの問題ーー沖縄におけるヘイトクライムの多発やミャンマーのクーデターなどアジア各地の政治的困難ーーを並行視しながら、飽和的グローバル化とパンデミック、移動と隔離、暴力と政治、テロや戦争と恐怖など、蕪雑な時代の政治と困難を、抵抗的に「転換」する方法としてのアートの可能性を、考察したいと思います。