英文講読 マイケル・フリード『もうひとつの光(Another Light)』
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クラス紹介
このクラスは対面でのみ行いオンライン受講はありません。
英語の美術書を原文で読んでいく企画(講読)です。
本企画ではマイケル・フリード(Michael Fried)の『もうひとつの光(Another Light)』(2014)の通読を目標にします。目的は主に2つ、「作品批評を読むこと」と「英語を読むこと」です。
マイケル・フリードは1960年代から活躍する美術批評家・美術史家です。すでにエッセイ「芸術と客体性」(1967)と単著『没入と演劇性』(1976)が訳されており、共通する「演劇性」という語がしばしば取り上げられます。
最近国内で美術批評書の翻訳出版がにわかに盛り上がっているように思います。フリードの同時代のロザリンド・クラウスやハロルド・ローゼンバーグの主著、またボリス・グロイスやヒト・シュタイエルなど後進世代の著書も訳されました。
グロイスやシュタイエルの文章が、現代の政治やメディア環境に照らしたモダニズム批評の再解釈を積極的におこなうように、作品の読み方を通じて環境・状況にアプローチする可能性が振り返られていると思います。
フリードは「穿って読む」ことに長けた批評家です。そのキャリアは面白く、ミニマル・アートを論じた「芸術と客体性」のあとは同時代の批評から離れ、サロン絵画やクールベ、マネなど19世紀以前の画家を分析していました。ところが40年を経た2008年、写真論『Why Photography Matters As Art Never Before』で同時代芸術の議論に復帰し、以降文学論を含む単著を精力的に発表しています。
『没入と演劇性』終盤に登場するジャック゠ルイ・ダヴィッドから、『Why〜』で扱うトーマス・デマンドまで、従来と異なる視座から光を当てて新鮮な伝統を見出すのが本書『もうひとつの光:ダヴィッドからデマンドまで(Another Light: Jacques-Louis David to Thomas Demand)』です。
フリードのこうした仕事は、たとえば『Courbet’s Realism』(1990)に見られる、執拗な観察と記述に支えられています。本書の2世紀にわたるさまざまな作品の記述は、時代やメディアの違いに広く対応した、観る・記述する・解釈する実践の良いサンプルだと思います。
フリードの著作は既訳のほか、雑誌等で『Why〜』までは断片的に国内に紹介されてきましたが、以降の仕事はまだほぼ紹介されていません。中期フリードの総括的成果といえる本書を見通すことも本講読の目標です。
加えて本企画は「英語を読む」ことも重要な目標にしています。
文章表現という点では、すでに挙げたクラウスやシュタイエルも特異なスタイルをもちますが、作品の細部を穿つフリードの解釈は明確な文章記述に支えられており、そこには構文や的確な語彙が貢献しています。それら表現を丁寧に追うことが、そのまま作品構造の記述とイコールになる好例として、フリードを扱えたらと思います。
シュタイエルが揶揄・批判するとおり、「英語」の席巻と排他性は、美術の市場にも批評にも、また教育市場にもとりついています。その点でただ英語にかしづくのは躊躇があります……が、しかしどうせなら「ファッキン」と言いながらでも、まずは臆さず相手にできることが、「別の(another)」光、日光、蝋燭、デスクライト、バックライトのもとで文章に相対する、これからの日々の身軽さになったらと思います。
カバー画像=Michael Fried, Another Light: Jacques-Louis David to Thomas Demand, 2014, Yale University Press
回数
10回
定員
20名
価格
一般 30,000円
学部生 10,000円
日程
2022年
10月17日、10月31日、11月7日、
11月28日、12月5日、12月19日
2023年
1月16日、1月23日、2月27日、
3月27日
曜日
月曜日
時間
20:00ー21:30
選抜方法
先着順
申込期間
9月20日(火)20時ー30日(金)20時
申込方法
PARA 第1期 受講受付終了
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