抵抗としての芸術のために「議論」をする練習

 

居原田遥さんが講師を務めた『アート・アクティビズム実践論「社会/政治問題を考える」(2023年5~7月開講)』の受講生に講座の感想を聞きました。

 
自己紹介とこのクラスの受講理由を教えてください
吉田ーシステムエンジニアをしながら、映像制作等をしています。ハードコアなタイトルだったので、アートテロリストを養成したりするのかもと妄想したりして、自分が参加しても大丈夫かなと思いつつ、受講しました。 酒井ー学生時代は建築を学んでいて、美術館とか、地域のアートプロジェクトとか、
アートのある場所について知っていくうちに面白くて。就職したのですが、アートに関わっていたくて、現在地に至ります。 問題解決の方法は色々あると思いますが、数字を使った分析などではなく、作品だったり、別の手が入る手法が好きで。そのようなことを真正面から考えられそうな講座だと思ったからです。 ただ、参加要項に書いてあったことが結構きびしかったので、作品を作ったり、美術の専門教育を受けたわけでもない自分が参加して楽しめるのかは少し心配でした。が、実際に参加してみたらもっとマイルド(?)な時間が流れている講座でした。アジアに詳しくなくても、参加してとても楽しかったです。居原田さんは中身はあつあつなのに火傷はさせない、優しい人だと思いました。

内田ー概要に書いてあった東南アジアのアートや社会運動に興味を持ったためです。

クラスで印象に残っていることはありますか。

内田ー芸術や文化の機能というか使い方の一つが、政治的に不安定だったり暴力が表面的にあるところでの例であることで、よりわかりました。版画が紹介されていましたが、日本でも農民版画運動とかあったので印象に残っています。

吉田ー居原田さんが、ミャンマーが民主化された瞬間の「春」に国際交流で行っていた話を聞けて良かったです。今は軍事政権化にあることは知っていたので、その場にいた人の貴重な証言を聞けました。話せる範囲内であったとは思いますが。
初めて聞く話が多く、本にもネットにもあまりまとめられていない最新の内容で、大変勉強になりました。

酒井ーいつも私は自分のことで精一杯になりがちですが、明日は今日より良くしたい、ということは考えていて、毎日すこしずつ変化を生むように頑張っているつもりなのに対して前に進んでいない感覚がありました。
が、この講座を通して、こういうことの積み重ねでも十分、なにか社会への変化をもたらすきっかけになるのかなと思いました。些細なことでも、良くも悪くも社会に影響する・してしまうのだと思います。講座を受けたことで、日々の自分の生活の送り方を客観的に捉えられるようになってきたような気がしています。

内田ーフィールドワークもとても楽しかったです。大久保とか池袋とか。海外から移住してきた方々が集住している場所があることは知っていたのですが、実際に行くと空気とか匂いとか声とかが他の場所とは違うので、そこを実際に歩くことは大事だなと思いました。なんか、ココナッツミルクで炊いた?みたいな飯と肉みたいな料理がすごく美味しかったです。 酒井ーフィールドワークでは実際にミャンマーの方々のコミュニティーが強くあるエリアを、居原田さんの話を聞いたりみんなで思ったことを話しながら歩くことで、「生活」を意識した気がします。今までだったら観光的な雰囲気を味わってお料理おいしかったね、で終わっていたと思いますが、フィールドワークを通じて細かなところまでみてみよう、という姿勢で立ち入れたと思います。
 

内田ー講義の回も面白かったのですが、最後の受講生全員の発表を聞く回が面白かったです。

酒井ー私はちょうどその時私生活がいろいろ大変で心身ともに病み切っていて、それを解決するために人と交換日記をすることを始めた、という発表をしました。講義ではクーデターとか、内戦とか、明日生きるか死ぬかの大きな内容を扱っていますが、もっと小さな自分の気持ちの整え方を題材にした発表で、こんなもので大丈夫かなとちょっと不安でした。
が、居原田さんも感想をたくさん言ってくださって、楽しかったです。よしのさんの発表も家族との関係のお話で、身近な実践を考えていくことも十分アクティビズムだなと思いました。他の受講生の話もあったかい気持ちになれるものが多くて、いい時間でした。発表できてよかったです。

吉田ーみなさんの発表を聞けたのは、アクティヴィズムに関して、新しい感覚がありました。クローズドな空間だから言える、社会への抵抗と言いますか、サバイブ戦術と言いますか、「抵抗」の再定義が起きた気がしました。

七回のクラスの参加ありがとうございました。またぜひご参加ください。
構成:よしのももこ 2023年7月23日、26日にオンラインにて収録