可能|Possible

会期

前期「デバッグ」
2022年11月18日(金)ー 23日(水)
後期「インストール」
2022年11月23日(水)ー 27日(日)
トークイベント
11月20日(日)19時 松永伸司 11月21日(月)19時 宮崎裕助 11月23日(祝・水)19時 伊藤亜紗
開場時間14:00 – 21:00
チケット1,000円(展覧会入場料・会場にて発売します)
備考11月19日(土)休場 イベント当日は19:00まで開場

プログラム概要

「可能」は大岩雄典による個展です。「可能」は大岩によるひとつの新作インスタレーションをめぐって、前期と後期にわたって展開する展示です。
言葉・行為やその主体との関係を「空間」という形でとらえてきた大岩は、感染症拡大下での隔離・予防がもたらす時空間をスケッチした《バカンス》《悪寒》、会場マージンという一種の租税を味覚に変換した《margin reception》、パラノイアックな無際限さの空間《渦中のP》など、そのたびごとに新たな感性を上演するインスタレーション作品を制作してきました。
今回大岩が展示するのは新作のカード・ゲームです。簡潔なルールをもったこのゲームは、プレイのたびに無数の行為に開かれており、大岩はそれを「可能性の空間」と表現します。

前期「デバッグ」

このゲームの試作版と完成版をともに並べることで、空間あるいは作品が直るさまを、両方のプレイを通じて直感的に示します。それは、バグに苛まれた動きづらい空間が、奔放さを残しながらも直っていく―それは一種の「立法・法整備」に近いかもしれない―ことになぞらえられるでしょう。
2022年11月18日(金)ー 23日(水)

後期「インストール」

完成版と「拡張パック」を展示します。拡張パックとは、オリジナルのセットに追加することで、ゲームをアレンジするものを指します。大岩は、カードゲームが行為の可能性のニュートラルな「空間」ならば、そこに新たなカードを加え、その中で観る可能性を作ることは、空間へ作品を新たに設置(インストール)すること—芸術—だと捉えます。それは、主題やそのイメージの展示とはまるで異なる方法で、ある行為への抵抗や促進のもつ美的な感覚、知能の物質性の感覚をもたらすものです。
2022年11月23日(水)ー 27日(日)
 
これら二つのアプローチは、偶発的な集団によるプレイ(演劇)を基礎づける空間を「なおす」「かえる」という意味で、具体的な変革の可能性への美的判断を発見する瞬間を上演する、その抽象的外見とは裏腹にあまりに現実的・即物的な取り組みといえるでしょう。
「プレイとは、進行しつつ場面に応じて規則を立て直すこと、あるいは、新陳代謝を求めてやまない規則を創造することなのだ」(ヒト・シュタイエル「台座の上の戦車」『デューティーフリー・アート』大森俊克訳)
 
ヘッダー写真=湯田冴
 

関連イベント

「可能」の会期中、展示会場内で3つのトークイベントを開催します。 11月20日(日)は分析美学・ゲーム研究を専門とする、松永伸司さんをゲストに迎えます。松永と大岩は、いままでも「ゲーム」を主題に、大岩個展でのトークイベントや『美術手帖』企画(2020年7月号)で協働してきました。大岩の卒業制作展に際した「バグる美術」(2017)は、「バグ」とゲーム、美術をめぐるトークでしたが、今回は、大岩にとって初の「ゲーム」そのものである本展示作品や、美術作品の制作について、「デバッグ」つまりバグの修正という観点で検討する点で、5年越しの続編になるかもしれません。 翌21日(月)は、哲学・美学・現代思想を専門とする宮﨑裕助さんをゲストにお迎えします。宮﨑の最新著作『ジャック・デリダ——死後の生を与える』のデリダや、翻訳(共訳)を手がけたポール・ド・マンの議論は、大岩の制作や執筆において、活動当初から重視されていました。またなにより、宮﨑の著書『判断と崇高』の題にある「判断」「崇高」は、大岩の本作品の、無数に展開するプレイにおいて翻弄される鑑賞者=プレイヤーの感覚を論じる鍵語になるでしょう。 23日(水・祝)は美学・現代アートを専門する伊藤亜紗さんをゲストにお迎えします。伊藤が2018年に訳出したマイケル・フリード『没入と演劇性』(原著は1976)は、大岩もたびたび言及する概念「演劇性」を論じた著作です。芸術作品とわたしたちの世界同士の関係を指すこの概念は、作品の「プレイ」に際して、どう考えられるでしょうか。またなにより、本展のタイトル「可能(possible)」は、伊藤が著作『目の見えない人は世界をどう見ているのか』で検討してきた「能力(ability)」もしくはまさに「可能(able)」のテーマを連想させます。
 
🪧
23日は「デバッグ」「インストール」が同時開催されます。
ゲーム「試作版」は、2022年2月に二人展「人数・時間・対象年齢」(PARA)で発表された《刑吏たち伴奏たち》です。
「拡張パック」の一部には、同展のイベントで構想された、大岩が過去発表してきた作品を「カードゲーム化」したものがあります。
 
カードゲームの販売価格は4,000円、拡張パック(全2種)は各1,000円を予定しています。
カードゲームの購入予約を受け付けています。以下のGoogleフォームからお申し込みください。上記価格で受け付けております(展示入場料は別)。また会場にお越しになれない方も、通販がありますので、ぜひご検討ください。会場・予約ともに販売数には限りがあります。
 
また本展休場日の12月3日には、大岩によるレクチャー「悲劇としての制作」が開催されます(要申込/「PARA神保町」が主催する連続講義「作品とは何か」の詳細をご確認ください)。
 
 
写真=湯田冴
写真=湯田冴